心房細動と診断されアブレーション治療を受けられる方へ

病院

2022年8月に元プロレスラーの高田信彦氏が治療をしたとSNSで報告し知名度が一気に上がった心房細動。参照:高田信彦氏 Instagram

健康診断や日頃の不調、AppleWatchなどで心房細動が発覚しアブレーション治療を受けることになった方、またはこれから病院へいく方が求める治療を受けることができる病院選びをサポートさせていただくサイトとなります。

治療を案内された際に医師から説明を受けられたとは思いますが、改めて心房細動という病気とアブレーション治療についてご説明させていただきたいと思います。

心房細動とは?

心房細動は心臓のリズムが乱れる不整脈の一種です。通常、心臓は一定のリズムで規則正しく動いていますが、心房細動になると心臓の上部にある「心房」という部分が不規則に動くようになります。その結果、心臓全体の動きが乱れてしまいます。

心房細動のポイント

1.心臓の構造

心臓は4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)からなり、心房細動は「心房」の部分で起こります。心房が乱れることで。心室に送る血液の量が不安定になります。

2. 症状

・動悸

・息切れや疲れやすさ

・めまいやふらつき

・無症状の事もある

3.原因

・高血圧や心臓病

・加齢

・睡眠時無呼吸症候群

・過度のストレスや飲酒

4.危険性

致死性のある病気ではありませんが、血液がうまく流れず、血液の塊(血栓)ができやすくなります。その血液の塊が脳に運ばれれば脳梗塞、心臓の血管(冠動脈)に運ばれれば心筋梗塞を引き起こす原因となります。

5.治療

・薬物療法:心拍を安定させる薬や血栓を防ぐための血液をサラサラにする薬が使われます。

・カテーテルアブレーション:心臓の異常な電気信号を止める治療。薬物療法では一生薬を飲み続ける必要があるのに対し、アブレーション治療では心房細動の根治を目的としています。以下で治療の詳細をご説明させていただきます。

アブレーション治療

ここからは、心房細動を根治するための治療であるアブレーションについて説明します。

心房細動は左心房から4本生えている肺静脈付近に原因があるとハイサゲール医師が解明しました。そのため左心房のこの部分を囲ってしまい原因となる部分を隔離してしまおうという治療がスタンダードとなっています。

では、どうやって隔離していくのか

ここに関しては心房細動を治療するための機器を販売しているメーカーやよって様々ですが、一般的な方法2種類と最新の方法を合わせて3種類を説明します。

RFアブレーション

RFアブレーションは、ラジオ波(RF波)を用いて、心臓内の異常な電気信号を発生させる部位を加熱し、その部位を焼灼(無効化)する方法です。この手法は、カテーテル(細い管)が血管を通じて心臓まで挿入し、異常信号が発生している部位に高周波のエネルギーを使って熱を加え、信号伝達を遮断します。

治療の流れ

  1. カテーテルの挿入:
    • 医師は、太ももの静脈や腕の静脈を通じて、カテーテルを心臓に挿入します。カテーテルは心房に達し、異常な電気信号が発生している部位(通常は肺静脈周囲)を特定します。
  2. RFエネルギーの供給:
    • カテーテルの先端からRFエネルギーを放出し、異常な電気信号が発生している部位を加熱します。加熱された組織は焼灼され、信号の伝達が遮断されます。この方法により、異常な電気回路が破壊され、心房細動を改善することを目指します。
  3. モニタリングと確認:
    • 治療中、心電図(ECG)を使用して、心房細動が治療されたかどうかを確認します。治療後、再発がないかを検証することが重要です。

RFアブレーションの効果

  • 肺静脈隔離:
    • 最も効果的な治療法は、肺静脈周囲の異常信号を遮断することです。多くの心房細動患者では、肺静脈周囲が異常な電気信号を発生させており、この部分を隔離することで心房細動が治療されます。
  • 不整脈の改善:
    • RFアブレーションは、心房細動の症状を改善し、心房細動の再発を抑える効果があります。多くの患者で心房細動が消失し、正常な心拍が戻ることが期待されます。

RFアブレーションのメリット

  • 高い成功率:
    • 特に肺静脈周囲に起因する心房細動に対しては、RFアブレーションは非常に効果的であり、治療後1年以内の成功率は高いとされています。
  • 長期的な効果:
    • 他の治療法と比べて、RFアブレーションは長期的に心房細動の再発を抑える効果があるとされています。
  • 最小侵襲:
    • 手術と比べて体への負担が少なく、患者の回復が早いです。通常、入院期間が短く、回復時間も比較的短いです。

RFアブレーションのデメリット

  • 合併症のリスク:
    • RFアブレーションには、一定のリスクがあります。例えば、血栓の形成、心タンポナーデ(心臓周囲に液体がたまること)、心臓穿孔、神経損傷などが挙げられます。
  • 再治療の可能性:
    • 一度の治療では心房細動が完全に解消されない場合があり、再治療が必要となることがあります。特に、心房細動が長期化している場合や、複雑な原因がある場合には再治療が必要なことがあります。
  • 不完全な治療:
    • 肺静脈周囲の異常信号を完全に遮断できない場合があり、その結果、心房細動が再発することもあります。

成功率と再発率

  • 成功率:
    • RFアブレーションの成功率は、治療法や患者の状態によって異なりますが、肺静脈隔離が成功する場合の成功率は**60~80%**程度とされています。再発率は治療後1年以内に比較的低く、成功した患者は症状の改善を感じることが多いです。
  • 再発の可能性:
    • 一部の患者では、再発することがあります。再発率を減少させるために、治療後に定期的なチェックが必要です。

RFアブレーションのまとめ

心房細動に対するRFアブレーションは、ラジオ波エネルギーを使って異常な電気信号の発生源を焼灼する治療法で、心房細動の改善に効果的です。特に肺静脈周囲に起因する心房細動に対して高い成功率を示しますが、再発する可能性もあるため、治療後のモニタリングが重要です。副作用や合併症のリスクはありますが、全体としては最小侵襲で回復が早く、症状の改善が期待できる治療法です。

RFアブレーションについてはJhonson&Jhonson社の製品使用率が非常に高いです。

Cryoアブレーション

Cryoアブレーションは、冷却を利用して異常な電気信号を発生させる部分を無効化する治療法です。具体的には、冷却ガスを使って心臓の異常信号の源となる部分、主に肺静脈口周辺を冷却し、その部分の電気伝導を遮断します。

治療の流れ

  1. カテーテル挿入:
    • 専門医は、太ももや首の静脈を通じて、カテーテルを心臓に挿入します。カテーテルは、心房に届き、心房内の異常信号が発生している部位を特定します。
  2. 冷却による治療:
    • カテーテルの先端には冷却装置が搭載されており、冷却ガス(通常は液体窒素や二酸化炭素)を用いて対象部位を冷却します。この冷却によって、異常な電気回路が遮断され、心房細動が抑制されます。
  3. モニタリングと確認:
    • 治療中、心電図(ECG)を使用して心房細動が治療されているか、また治療の効果を確認します。

Cryoアブレーションのメリット

  • 最小侵襲: 手術と比べて体への負担が少なく、傷が小さいため、回復が早いです。
  • 安全性が高い: ラジオ波アブレーションと比較して、冷却による処置は周囲の組織へのダメージが少ないため、出血や熱による合併症のリスクが低いとされています。
  • 精度: 冷却によるアブレーションは、治療部位を広く覆い、異常な電気信号を効果的に抑制できます。
  • 再発率の低下: 肺静脈周囲の異常信号に特化して治療できるため、再発のリスクを低減することが可能です。

Cryoアブレーションのデメリット

  • 適用範囲の限界: 心房細動が長期間続いている場合や、複雑な電気的な異常がある場合には、冷却だけでは十分な効果を得られないことがあります。
  • 治療後の再治療: 一度の治療では完全に心房細動を解消できない場合があり、再治療が必要となることがあります。
  • 合併症のリスク: 低いとはいえ、血栓形成や心タンポナーデ(心臓周囲に液体がたまること)などの合併症のリスクがあります。

効果と成功率

Cryoアブレーションは、特に肺静脈周囲に起因する心房細動に対して高い効果を示します。研究によると、Cryoアブレーションの成功率は約60~80%程度であり、治療後1年以内に心房細動が再発しない率は比較的高いとされています。

Cryoアブレーションのまとめ

心房細動に対するCryoアブレーションは、冷却を利用して異常な電気信号の発生源を無効化する治療法で、最小侵襲で行えるため、患者の回復が早く、他の治療法と比べて安全性が高いとされています。ただし、すべての患者に適応できるわけではなく、症例によっては他の治療法との併用が必要なことがあります。治療の効果を最大化するためには、医師との十分な相談が重要です。

Cryoアブレーションについてはメドトロニック社の製品使用率が非常に高いです。

Pulse Field アブレーション

Pulse Field Ablation(PFA、パルスフィールドアブレーション)は、心房細動(Atrial Fibrillation, AF)に対する比較的新しい治療法で、異常な電気信号の発生源を破壊するために電場(パルスフィールド)を利用する方法です。この方法は、ラジオ波アブレーション(RFアブレーション)や冷却アブレーション(Cryoアブレーション)に代わる新しい選択肢として注目されています。

Pulse Field Ablation(PFA)の概要

PFAは、短時間で強い電場を利用して心臓組織を破壊する治療法です。異常な電気信号が発生する部位(特に肺静脈周囲)に対してパルス状の電場を送ることによって、その部分の細胞を破壊します。この方法は、心房細動の原因となる異常な電気信号を伝達する部位を無効化することを目的としています。

PFAは、ラジオ波や冷却アブレーションとは異なり、電気的なエネルギーを使うことで、選択的に心臓組織を破壊する特徴を持っています。

PFAの治療の流れ

  1. カテーテルの挿入:
    • 医師は、太ももや首の静脈を通してカテーテルを心臓に挿入します。このカテーテルには、パルスフィールドアブレーションを行うための電極が搭載されています。
  2. パルスエネルギーの供給:
    • カテーテル先端からパルス状の電場(パルスエネルギー)が心臓組織に送られます。これにより、異常信号を発生させる部位(肺静脈周囲など)が選択的に破壊され、異常な電気回路が遮断されます。
  3. モニタリングと確認:
    • 治療中、心電図(ECG)で心房細動の状態をモニタリングし、効果を確認します。

PFAのメカニズム

PFAの特徴は、非常に短い時間で強力な電場を使用する点にあります。このパルス状の電場は、心筋の細胞膜に作用して、細胞の膜電位を急激に変化させることによって細胞が破壊されます。これにより、異常な電気信号を発する心筋が無効化されます。PFAは、非熱的な方法であるため、従来のラジオ波アブレーション(RFアブレーション)や冷却アブレーションとは異なるメカニズムで心筋を処置します。

PFAのメリット

  1. 選択的な組織破壊:
    • PFAは、従来の方法(ラジオ波や冷却)よりもより選択的に心筋の破壊ができるとされています。これにより、周囲の重要な組織に対するダメージが少ないと考えられています。
  2. 熱的ダメージの回避:
    • ラジオ波アブレーションや冷却アブレーションは、治療部位が高温または低温にさらされることによるダメージを引き起こす可能性がありますが、PFAは非熱的であり、組織に熱的ダメージを与えません。これにより、周囲の血管や神経への損傷を減らせる可能性があります。
  3. 治療の迅速化:
    • PFAは非常に短い時間で治療が可能なため、治療時間が短縮され、患者への負担が軽減されます。
  4. 回復が早い:
    • 治療後の回復が早いとされ、患者は比較的早期に日常生活に戻ることができる可能性があります。

PFAのデメリット

  1. 新しい治療法であるための知見不足:
    • PFAは比較的新しい治療法であり、長期的な効果や再発率についてのデータがまだ完全には確立されていません。特に長期的な臨床試験やデータの蓄積が必要です。
  2. 技術的な難しさ:
    • PFAを使用するためには、特別な設備や技術が必要です。また、PFAの適応症や治療方法についても、より多くの研究が必要とされています。
  3. 限られた施設での提供:
    • 現在、PFAを提供している医療機関はまだ限られており、普及が進んでいるとは言えません。したがって、治療を受ける機会が限定されることがあります。

成功率と効果

PFAは、特に肺静脈周囲に異常信号が発生している心房細動に対して効果的であると考えられています。初期の臨床試験では、PFAがRFアブレーションCryoアブレーションと比較して、同等またはそれ以上の効果を示していると報告されています。再発率についてはまだ十分なデータがないため、長期的な効果については今後の研究が必要です。

Pulse Field アブレーションのまとめ

Pulse Field Ablation(PFA)は、心房細動に対する新しい治療法で、強い電場を利用して心筋を破壊する方法です。この治療法は、熱的ダメージを避け、選択的に異常な電気信号を遮断することができるため、安全性や精度が高いとされています。現在、臨床での使用は進行中であり、さらなる研究とデータの蓄積が期待されています。

PFAについてはボストンサイエンティフィック社の製品使用率が非常に高いです。

心房細動の治療に伴うリスク

合併症

上記でも説明したがアブレーション治療では血栓の形成、心タンポナーデ(心臓周囲に液体がたまること)、心臓穿孔、神経損傷、食道婁などのリスクが伴う

再発

再発率が低いと言いつつ医師の力量や治療を受ける病院の手技の特徴などによっては再発してしまう可能性は高まる

手術時間 

手術を受ける病院によって異なるが、早い病院で1時間程度、遅い病院で5時間とかかってしまう病院がある。

麻酔の方法

全身麻酔でおこなう病院と局所麻酔でおこなう病院がある。

全身麻酔

  • メリット:起きたら手術が終わっている。痛みを伴っていたとしても意識がないため体感はない
  • デメリット:手術中意識がないため、何が行われているか分からない。麻酔科医が常駐している病院でしかおこなえない

局所麻酔

  • メリット:医師の声が聞こえるため手術中何が行われているか分かる、麻酔科医が常駐していなくても手技が行える
  • デメリット:手術中に痛みを感じる瞬間がある。手術時間が長いと苦痛になる。

適切な治療選び

上記でアブレーション治療方法の3種類を説明させていただいたが、病院によっては3種類のうち1種類しか治療方法がないことや2種類あるが片方は治療成績がイマイチということがあります。その治療を受けるリスクを減らすためにも病院選びは非常に大事になってきます。

手術中に浴びる放射線の量

心臓カテーテル治療であるためもちろん放射線は浴びる。

放射線の被ばくに対する意識が高い医者やそうでない医者と様々であるため放射線を浴びたくなければ病院選びは重要なポイントである。

医師の力量

再発の確率を下げるため病院選びは非常に重要なポイントである

病院ホームページにて年間300例おこなっているため安心と思うかもしれないが医師が5人いた場合一人当たり年間60例しかやっていない計算となる。年間100例でも1人で手術をおこなっている医師の方がレベルは高い可能性はある。

この記事を見て頂いた皆様へ

かかりつけ医がアブレーション治療をおこなっている場合やアブレーション治療を行っていない病院で心房細動が見つかった場合に病院を紹介されると思うがその病院がどのような治療をおこなっているか、、、そこまで教えてくれる病院はそうない。。。

医師の言う成功率に再発率や軽い合併症(肺静脈の狭窄)などは含まれていない。

手術をするなら手術時間は短く、なるべく放射線は浴びず、合併症はなく、2回目の手術になりにくい病院を選んでいただきたい。

どの病院、どのメーカーの機器を使用するかを選ぶ権利があると思う。

臨床工学技士である私を信頼していただき、少しでも自分が求める治療をおこないたいと思っていただけたのであれば、ぜひ問い合わせください。

タイトルとURLをコピーしました